2010年度石川賞受賞者

受賞者

宮尾龍蔵氏(神戸大学・教授)

受賞理由

宮尾龍蔵氏の学術業績は,マクロ経済学、金融経済学、計量経済学において多岐にわたっている。また,わが国の金融政策,為替政策等の政策に関する理論的,実証的な研究に精力的に取組み,政策研究に大きな貢献を果たしてきた。こうした理論,実証,政策の分野において宮尾氏は50 本以上の学術論文を発表してきた。2000 年以降のものに限っても20 本以上の論文を公刊している。

宮尾氏の研究には次のような特徴がある。第1 に,時系列分析の手法を用いて日本の金融政策の効果について定量的分析を行っている。日本銀行による金融政策が1980 年代後半のバブル発生や90 年代前半のバブル崩壊の責任の一部を担っていたという批判が巻き起こったが、宮尾氏は冷静な立場から、計量経済学的にその効果を客観的に評価している。また、90 年代に金融政策の効果に構造変化があったのか、計量的分析も展開している。この分野における代表的な業績は、"The Effects of Monetary Policy in Japan," Journal of Money, Credit and Banking. 34, 376-392, May 2002、"The Role of Monetary Policy in Japan: A Break in the 1990s?" Journal of the Japanese and International Economies 14, 366-384、December 2000 である。

1990年代におけるわが国の長期低迷を打開すべく、新たな金融政策が数多く提案され、その効果をめぐって論争が繰り広げられた。たとえば、ゼロ金利政策、量的緩和政策、インフレ・ターゲット論をめぐるものである。宮尾氏の第2 の研究の特徴は、これらの政策論争に積極的に参加して、理論的、計量的成果に基づいて説得的な議論を展開したことである。代表的な業績として、「インフレーション・ターゲットとゼロ金利政策」『国民経済雑誌』第180 巻第6 号 神戸大学経済経営学会 43-58 頁、1999 年12 月を挙げておこう。

第3の特徴は,1990年代に日本経済が長期低迷を続けた構造的な原因にもメスを入れて、それに関する実証的分析を行っていることである。特に、供給面に焦点をあて時系列分析に基づいて需要面との相互作用の解明を行っている。特に、GDPギャップ、全要素生産性に関する定量分析は注目を集めている。

金融政策に関する研究を始めとする優れた実証分析を纏めた研究書『マクロ金融政策の時系列分析』(2006 年、日本経済新聞社)は、第49回日経・経済図書文化賞を受賞している。

このように宮尾氏の研究業績は,理論的厳密さと実証的基礎を兼ね備え,政策的含意が大きい。量だけでなく,質に関しても第一級であり,石川賞受賞に値する。

第5回石川賞選考委員会

  • 伊藤隆敏(東京大学)
  • 岩本康志(東京大学)
  • 大竹文雄(大阪大学)
  • 委員長 小川一夫(大阪大学)
  • 藤田昌久(甲南大学、経済産業研究所)

ホーム > 学会賞 > 日本経済学会・石川賞 > 2010年度石川賞受賞者