2008年度石川賞受賞者

受賞者

岩本康志氏(東京大学・教授)

受賞理由

岩本康志氏の学術業績は,公共経済学とマクロ経済学において多岐にわたっている。また,わが国の公共投資,税制,社会保障,公的年金,医療保険等の幅広い分野において政策に関する理論的,実証的な研究に精力的に取組み,政策研究に大きな貢献を果たしてきた。こうした理論,実証,政策の分野において岩本氏は70本以上の学術論文を出版してきた。2000年以降のものに限っても20本以上の論文を公刊している。

岩本氏の研究には次のような特徴がある。第1に,社会保障制度や財政投融資制度などの政策的に根幹となる制度について基本的な経済学のフレームワークを用いて周到な分析を展開し,政策のフィジビリティにまで配慮して政策的なインプリケーションを導き出している。こうしたスタイルの代表的な業績は,”The Fiscal Investment and Loan Program in Transition,” Journal of the Japanese and International Economies 4 (2002), 583-604である。また,近年盛んに研究がおこなわれている社会資本の生産性に関する実証分析の先駆となっている。税制の分野では,資本所得課税に関する研究が有名であり,理論的研究によって構築した枠組みを実証研究に適用した好例である。

第2に,ミクロ的なデータとマクロ的なデータの両面で質の高い実証研究を展開している。たとえば,”Do Borders Matter? Evidence from Japanese Regional Net Capital Flows,” with E. van Wincoop, International Economic Review 41 (2000), 241-269があげられる。また,『国民生活基礎調査』の個票データを用いた介護の実証分析では,分析手法の工夫によって新しい地平を切り開いており,公的年金,社会保障,高齢者医療保険制度の分野における研究は,政策分析としての切れ味に優れている。岩本氏が中心となって編集した,家計のミクロ個票データに依拠した研究書『社会福祉と家族の経済学』(2001年,東洋経済新報社)は,第3回NIRA大来政策研究賞を受けている。

第3に,最近,マクロ経済学的な観点から財政政策と金融政策のポリシー・ミックスの議論を積極的に展開している。たとえば,”Monetary and Fiscal Policy to Escape from a Deflationary Trap,” Monetary and Economic Studies 23 (2005), 1-46が代表的なものである。

このように岩本氏の研究業績は,理論的厳密さと実証的基礎を兼ね備え,政策的含意が大きい。量だけでなく,質に関しても第一級であり,石川賞受賞に値する。

第3回石川賞選考委員会

  • 猪木武徳(国際日本文化研究センター)
  • 小川一夫(大阪大学)
  • 金本良嗣(東京大学)
  • 委員長 齊藤誠(一橋大学)

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